atem

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...atem


■呼吸

或る日、或る時、呼吸をするだけで体の水分を失っている事を知った。

自分はその、
『ただ息して居るだけでも水分を失う。』という事実から
『ただ生きて居るだけでも何かを失う。』というアイロニーを感じ取った。
ソレをきっかけに【呼吸】が気に掛かるようになる。

■シャボン玉

たまたま通り掛かった公園にいた子供達がシャボン玉で遊ぶ光景を見て、ふと思った。
吐いた息がシャボン膜に包まれて、球体になったのがシャボン玉である。
空中で作る気泡。
普段眼に見えていない【呼吸】が可視状態になっている。とも考えられる。

もしも、全ての呼吸がシャボン玉のように眼で見えたなら。
世界はどんなに気味が悪く、綺麗で楽しいだろうか、と。

公園で素敵な妄想をしながら、法に触れない程度にニヤニヤした。

■シンクロ

地球と月と生命誕生の経路。
今現在の生物や植物や天候の奇跡的な関係、カタチ。
興味のあることを調べていく過程で、或る言葉に出逢った。

【梵我一如】。

梵とはブラフマン(宇宙を支配する原理)
我とはアートマン(個人を支配する原理)

宇宙と個が本質に於いて同一(等価)である、という古代インドの思想。らしい。

梵(ブラフマン)はサンスクリットの【力】を意味する単語から来ている。
外界に存在する全ての物と全ての摂理に在って不変の現実。
自然そのものに偏在する原理、真理を指し。
【宇宙の源】【魂】である、とのこと。

我(アートマン)は個人の体の中に在る個体原理で、元はドイツ語のatem(アーテム)【呼吸】と同じ語源から来ている。
そして他人と区別しうる不変の実体、【霊魂】、【自我】と派生して。
【本質】という意味でも用いられるように。なった。らしい。

まさかの【呼吸】繋がり。
興味のある物事を調べていくと。
時にバラバラだった事柄が、シンクロして思わぬ処へ着地する。
事がある。

■アイソトープ

何だか良く解らないってヒトも居ると思う。
が、もっとシンプルに考えれば、こうなるだろうか。

地球上に存在する素材だけで、僕達は構成されている。
つまり、ある意味【星のカケラ】とも言える。
人も石コロも地球である。
地球の同位体(アイソトープ)。
その地球も宇宙に在る材料で出来ている。
だから本質に於いて全てが宇宙と同一。
プランクトンも火星も僕も葉っぱもみんな本質は同じ。という事らしい。

で、どうだろうか。余計解り難いだろうか。

■パラドックスとアイロニー

僕はこの世界の全てに。意味も価値も無いと思っている。
何故なら【意味】も【価値】も人間による人間だけが形作る便宜的な【概念】に過ぎないから。
だから。
全てに意味も価値も無い。
こう言うと、悲観的な考えだと勘違いされる事がある。

けれども、全てに価値が無いとするならば、裏を返せば皮肉にも。
『全てが等価である』という考えに通ずる。
思うに、事象の間に在るのは意味や価値などではなく、純粋に【原因】や【理由】だけだと思う。

当たり前な事なのだけど、ソレに気付いて無い人は案外多い気がする。
生きる意味だとか価値だとか。そういう贅肉は削ぎ落として、いつまでもガリガリな本質を。
そんな事で悩んだり絶望したりして、自ら命を絶つ必要も、無理矢理生き永らえる必要も、無い。
つまり意味や価値などに囚われない、そんな人間で在りたい。と言いたい。(?)

■兎に角

とにかく、ずっと呼吸や宇宙に想いを馳せていた僕は、『このシンクロ具合、題材として素敵っ。』と喰い付いた。
思想がどうこう言うつもりは無い。壮大で大袈裟なスケールの表現をしたい訳でも無い。

ただ、ごくごく身近な生の営みである【呼吸】を通して。
命、魂、宇宙を連想出来るような、そんな作品が出来たなら。

普段感じているアイロニーやシンパシーを制作の原動力に。
自分の内側に在る抽象的な感情を動植物達に【擬態】させ。
気泡状に記号化した【呼吸】と組み合わせる事で、アレゴリーとして表現して行きたいと思う。





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